ふるさと納税というものがある。自分の選んだ自治体に寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度だ。節税できて普段買うようなことのない美味しいお肉が食べられたりするという、素晴らしい制度だ。
「おおお……」
宅配で届いた箱を開き、思わず感動の声が口から洩れた。冷凍で送られてきたそれには、牛タンが入っている。冷凍されたその量は、大体一キロ。一人で食べるには多すぎるほどの量。
なんという素晴らしい光景だろう。
「スーパーじゃ買えない高級肉が、こんなに……。ありがとう、父!」
そう、これは父親からの支援物資だった。
父親から電話があったのは先日のこと。
『肉、送ったから』
簡単なその連絡から、早数週間。ちっとも送られてこないな、と思っていた時期を通り過ぎ、そろそろ忘れそうという時期にそれは届いたのだった。
箱に同封されていた紙にはこう書かれている。ふるさと納税のお礼、と。
ふるさと納税とは、寄付制度の一つだ。日本国内で生活している人が、自分の住んでいる市町村以外の自治体に対して納税することで、その自治体に寄附ができる。寄付をする際には、どのような使い方をしてもらいたいかを指定したりもできるらしいので、寄附した自治体に対して自分が直接関わりを持つことができるという面もあるらしい。
しかし、どちらかというと、節税や返礼品目当てが主目的で利用されているものだろう。
ふるさと納税を実施すると、返礼品という形で自治体から様々な品物が贈られる。例えば地元の特産品やお菓子、地元の観光施設の入場券など。返礼品は寄附する金額に応じて異なる内容になっており、寄附金額が多いほど豪華な返礼品がもらえる。
実家で父がよく利用していた。その恩恵を少しばかり、娘である自分に回してくれたのだ。
「返礼品って、寄付金額の3割以下なんだっけ。じゃあこれ結構高いかなあ。……あ、でも返ってくるのか」
いそいそと肉を冷凍庫にしまいながら、実家で父が、返礼品であるビールを飲みながら言っていたことを思い出す。
なぜふるさと納税はお得なのか。それは寄付した金額について、2000円を除いて住民税や所得税から控除されるからだ。つまりは2000円で返礼品をもらっているようなものになる。もちろん無制限ではなく、寄付ができる金額には、その人の年収によって上限があるらしいが。
ちなみに学生であり、納税していない自分としては、利用する枠などない。
「損しているわけじゃないんだけど、損してる気がするなあ。社会人になったら、絶対やろう」
なお、ふるさと納税の利用には、多少の手間は必要だ。いわゆる確定申告と言うやつで、これをやらないと寄付したお金が戻ってこない。本当にただの寄付になる。
もしも寄付先の自治体が5つ以内なら、ワンストップ制度というものもある。自治体から送られてくる書類に必要事項等を記載して返送すると、自治体で控除の手続きをしてくれる制度だ。5つ以下なら、寄付先の自治体が代わりに確定申告してくれる制度、と思っておけばいい。
父は確定申告が面倒だから、寄付する自治体を絞って利用していた。もっとも、ふるさと納税の窓口を実施しているようなところでは、寄付した情報をE-TAXに連携してくれるようなサービスを実施しているところもあるので、確定申告自体もそう面倒なわけではない。
「やっぱり、明日焼いてもっていこうかなー」
送られてきた肉は複数のパックに分かれている。その一つを冷凍庫から冷蔵庫の方にうつして、にんまりと笑った。
「ふるさと納税って最高だなー」
多少の手間はかかっても、やらない理由はない。


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