小さな子供から大人まで、みんな大好きポテトチップ。嫌いな人に会ったことがないポテトチップ。揚げたポテトなのでカロリー高いよポテトチップ。袋がパンパンなのに、すぐになくなるよポテトチップ。
一人暮らし初めて、コストパフォーマンス的に買う頻度が減ったよポテトチップ……。
「というわけで、ポテチを腹いっぱい食いたいと思ったわけだが」
「唐突だなあ。だがわかる」
大学のベンチで、今日も変わらず友人たちと食事をしている。その一人である眼鏡の友人が、カップ麺をすすりながら苦笑した。まだ弁当は持ってきていない。包丁は買いなおしたのだろうか。
「ポテチかあ。おいしいんだよねえ。同じ量なら、ショートケーキよりもカロリー高いらしいってきいて……食べるのにちょっと罪悪感を覚えたりもするけど、やめられないんだよねえ……」
弁当持参を継続している友人が軽く息を吐いた。女性にとってはカロリーが気になる魔性の食べ物らしい。ショートケーキよりもカロリーが高いのは知らなかったが。
そもそもポテトチップは、ジャガイモを薄切りにして油で揚げたものだ。なんでも、フライドポテトが厚い! というクレームに逆切れしたシェフがフォークにさせないぐらい薄くしたところ、好評を得てしまったというのが誕生秘話というやつらしい。
元々はフライドポテトな上、薄くしたことによって油の量も増えてカロリー爆上げ。さらに薄いため食事の代わりにはならず、お菓子以上になることはない。
あくまでカロリーの高い嗜好品という位置づけだ。
「わたしはのりしおが好き」
「俺はコンソメかなあ」
「どんな味でも大体うまいよな。でも基本はうすしおだろ」
一瞬、自分も含めて全員が黙る。この瞬間、全員頭の中でポテチを食べてた、きっと。
……余計に食べたくなった。
だが一人暮らしをしていると、ポテチを買うというのも少し及び腰になる。コストパフォーマンス的なところからだ。ポテチを買うぐらいなら、おにぎりを買った方が腹にたまる。おにぎりを買うよりかは、米を買って炊いて、おにぎりを作った方がさらに安上がりで量が食える。
一人暮らしをしていると、とりあえず食っておけば大丈夫だろ、というような認識にどうやらなるらしい。そんな状況で、すぐに食べ終わってしまう中身よりも夢と空気の方が多いあの袋を買うのは、心理的なハードルがあるわけだ。
ますます食べたくなったぞ。
「うすしおでいいなら、作ればいいんじゃないの? 前にやったことある」
眼鏡の友人が、ぼそりと言う。
「面倒だし大変だけど、正直、一番好きだったな」
「ほう。聞こう」
自分で料理をするという手間さえ惜しまなければ、自炊の方が安く、そして量が食べられるのは自明だ。だがポテチを作った経験はないし、家で油料理をするのも正直ハードルが高いと思っていた。だが経験者の言葉があれば、そのハードルを越えることができるかもしれない。
友人が語ったポテチのつくり方自体は簡単だ。ジャガイモを薄くして、油で揚げればいいとのこと。……それぐらいは自分でもわかる。
「みそはさ、ピーラーで薄切りにするんだよ。めちゃくちゃ薄くなって、これがうまいんだ。あとは油で揚げて、塩をぱらぱらすればいいだけ。揚げ油も少しで済むし、簡単だ。めちゃくちゃ面倒だけど」
「ピーラーじゃなくて、スライサー使えばいいんじゃない?」
もう一人の友人の提案に、彼は首を振った。
「一回スライサーでやったこともある。けどピーラーの方がうまかったんだよね。薄さが違うっていうかさ。スライサーもいろいろと種類があるから、家にあったやつのせいかもしれないけど。市販にも薄いポテチってあるだろ? あれより薄くて、家でなきゃ食べられないものになってる気がする」
「確かにうまそうだな。でも、量を作れないような気がするなあ」
「面倒は面倒だと思うよ。コスパはよくてもタイパはさ。けど、味はいいよ。市販では食べたことのない食感だと思う。もう一度言うけど、自分の中では一番うまいと思ってる」
ジャガイモをピーラーで薄くしまくる自分を想像する。ひたすらひたすらピーラーをジャガイモに当て続けるのは、想像するだに面倒だ。それに、そもそも最初の話は量を食べたいということだった。であれば、彼女が提案していたスライサーを使って大量に作るのはどうだろうか。
それもそれで面倒かもしれないが、ピーラーよりはましだろうし、なにより大量のポテチというご褒美が待っている。
だが何事も練習というものは必要だ。大量に作って失敗するなど、目も当てられない。
「市販では手に入らない、美味しいポテチか」
とりあえず、お試しで作る分にはいいかもしれない。


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