運動というのは偉大だ。適度な運動は身体を健康にする。人間も動物だから、身体を動かすことこそが生命体のあるべき姿なのだろう。だが実際にそうできるかというと、必ずしもそうではない。座っていることのなんと多いことか。勉強の時はもちろん座っているし、その疲れをいやすために息抜きでやるのは動画の視聴。結局動かない。
「というわけで、腰が痛いわけなんだけど」
「運動不足すぎだろ」
「若さって、実年齢だけじゃないんだねー」
いつものベンチでぼやいた言葉に、友人たちの容赦ない言葉が刺さる。
「部活とか、サークルとか、運動やってみればいいんじゃない?」
自前の弁当を食べながらそういうのは、自分にとっては珍しい女性の友人。地方から出てきたという彼女は、快活で健康的な雰囲気を出している。自然とともに育ちました、というような雰囲気だ。
「部活はガチな奴が多いだろ。サークルぐらいがいいんじゃないか?」
そう言うのはもう一人の友人。黒髪短髪の彼は、昔から運動やってましたという体形をしている。購買で買ったパンを食べているが、それじゃ栄養が足りなさそうな、きちんとした筋肉を持っている。
どちらも太陽の光を浴びて生きてきました、という感じだ。
「どっちも無理だ。生まれてこの方運動とは無縁で生きてきたんだ。体育の時間が最も苦痛だった人間なんだからさ。だてにひょろ眼鏡とかカイワレ君とか呼ばれてない」
「カイワレ……もやしですらないんだね」
「哀れな奴」
「ほっとけ。そもそも俺には運動なんてやる時間はない。空いた時間ができたなら、ゲームがやりたい。……だからこんなものを探してみた」
取り出したスマホに映したのは、『イス軸』についての動画だ。
【YouTube版】イス軸法の教科書(正しいフォームを紹介)
「イスに座ってお辞儀して、脱力脱力。そのままゆっくりと体を起こしながら立ち上がるだけ。所要時間は10秒。これで正しい姿勢になるんだと。これをやるとなんか骨で立ってるって感じになって、腰の負担が減るんだ」
「まじか? 怪しすぎないか」
「お金取られてない?」
「とられてない! それに結構有名になっているらしいぞ。正しくやるにはインストラクターとかもいるらしいけど、まあ俺はそこまで求めてないから」
そういいながら、ベンチを使ってイス軸をして見せる。
「な、簡単だろ。これをやると力が抜けて、でもしっかり立っているって感じになるんだよ。すぐに崩れちゃうから、今は頻繁にやっているけど、そのうち感覚が身体になじむらしい」
「……そうか。でもなあ、見た目、けっこう怪しいぞ」
「……うん。人前では、あまりやらない方がいいんじゃないかなあ」
おい。じゃっかん引いた感じでこっちを見ないでください。
「ほんとにいいんだってば」
「わかったわかった。でもな、運動はした方がいいと思うぞ」
「そうそう。ゲームの中でどれだけ大暴れしても、実際に筋肉は増えないよ?」
二人とも辛辣ですね。ほっといてよ……。


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