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25 健康的な生活

 コロナ渦を機に、働き方が変わった方は多くいるらしい。特にデスクワークをしていた人が、自宅でのテレワークになる例をきく。都会で満員電車に乗って通勤していたような方は、痛勤がなくなって多分にストレスが減ったことだろう。しかし長くテレワークをすることによって気づくこともまたある。そう、通勤はスポーツだったと。

「ちょっと怖い話していい? 結構年上の従兄弟のことなんだけど」

 久しぶりに購買で買った弁当を食べながら、ふと思い出したことがあって口を開いた。異性の友人、および眼鏡の友人の視線がこちらを向く。

 今日も今日とて、二人は自作の弁当を食べている。自分もかなり作るようになったが、二人の頻度の方が高い。運動系のサークルをやっていると、家に帰ってから食事を作る元気がないこともある。今日は朝も米を炊き忘れたので、購買のDX弁当だ。入手しづらい弁当だし、うまいし、これはこれでいいのだが。

 それはともかく、DX弁当には鶏の唐揚げが入っているのだが、この唐揚げが記憶の扉を開いた。思い出したのは、従兄弟のことだ。

 にんにく、生姜、酒、醤油で味付けされ、油で揚げられた唐揚げは、うまい。実に白飯に合う。から揚げだけで食べてもうまい。マヨネーズをつけて食べてもうまい。つまり、唐揚げはうまいのだ。

 しかし従兄弟は、そのうまいから揚げをあまり食べられないと言っていたのだ。

「ああ、胃もたれってやつ?」

「胸やけってやつかも?」

「いや……わかんない。で、まあこんなにうまいもんなのに、大変だなーとか思ったわけだけど、まあそれは置いといて。こっちでサラリーマンやってるんだけどさ、前にテレワークになってすげえ楽になったー、っていう話があったんだよ」

 今も影響が続くコロナ発生の初期、人の移動がリスクとなったあの頃に、テレワークを認める会社が増えて在宅勤務をする人が増えた。従兄弟もその一人だった。

 従兄弟は東京に出てきて一人暮らしを始め、今は結婚して子供もいる。大学に通うころからこっちに住んでいるので、満員電車というものにも慣れていたのだと思うが、テレワークになって出社が不要となり、日々の通勤がどれだけ負担だったかがよく分かったと言っていた。

「へー、よかったね」

「まあその時はな。で、それから早数年ってことなんだけれども、最近また会話する機会があってさ」

 コロナ発生から数年たち、発生当時ほど人の移動というものに制限があるわけではない。しかし一度始まったテレワークという制度が急になくなることもない。従兄弟もテレワークを継続している。

 そんな従兄弟が言っていたのだ。通勤はスポーツだった。身体的なストレスがなくなった代わりに、不健康がさらに進行した、と。

 考えてみると、それも当然だ。わざわざ外出せずに、家の椅子に座って仕事ができる。寝て起きて、食事をして、そして座り続け、食事をして寝る。簡単に言うとこんな生活になる。ほとんど歩かない生活になるわけだ。

「その生活なら、ゲーム三昧の俺より動いてない」

「だよな。んでさらに、体重が10キロ増えたんだと」

「それは……まずくない?」

 眉を顰めた彼女に向って、うなずく。

 昔従兄弟は言っていた。デスクワークだから、運動不足なんだ、と。テレワークはその比ではなく運動量が減る。通勤は自宅と勤務先との距離にもよるが、往復でそれなりの運動量がある。職場の帰りにどこかに寄り道などすれば、1万歩近く歩いていたりもする。トイレ一つとっても、自宅ならすぐのところにあるだろうが、職場ならトイレのある所まで移動しなくてはならない。

「従兄弟がさ、寝る前に身に着けていたスマホから、ふと今日どれぐらい歩いたかを見たんだそうだ」

 その時表示されていた数字は、500。ナマケモノよりは動いているかもね、というような数字。ナマケモノと違うのは、3食しっかりと食べていることだろう。

 太らないわけがない。

「ちょっと怖すぎる」

「……確かに、ホラーだな」

「人間って、動物なんだよな。動くことが前提なんだよ」

 従兄弟は最近、肩こりや腰痛に苦しめられているらしい。テレワーク用にかなりいい椅子を買ったりもして多少緩和もされたようだが、それでも原因が運動不足だから解決にはならない。

「とにかく運動はやったほうがいいぞ、というようなことをしみじみ言われた。若いうちにためるべきなのは、お金と筋肉だというようなことも言われた」

 その言葉に、最近腰痛で苦しんだ覚えのある二人の顔が、少し曇る。

 サークルで運動している自分と違って、二人は比較的運動量が少ない。自分の将来の姿が少し見えたのかもしれない。

「いつまでもから揚げをおいしく食べられる自分でいたい」

 そう思わん?

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