腰痛の原因は色々とある。運動不足もあるだろうし、その逆もあるだろう。普段の姿勢が悪くて痛めてしまう、ということもあるかもしれない。ぎっくり腰、なんてものもある。何が言いたいかというと、腰痛は加齢によるものだけでなく、どんな人にも発症しうるものだということだ。
「というわけで、腰が痛いんだよね……」
「運動不足だな」
「若さがどうのこうの、前に言われた気がするんだけどねー」
「うう。悪かったよ」
いつものベンチに座り、友人たちの容赦ない言葉にうなだれる。いつもよりも深めに座り、背もたれに体重をかけているのは、そうしないと腰が痛いから。
昨日の夜から、急に痛くなった。一過性のものだと思いたいが、普段の生活の結果だとしたら慢性的なものになりかねない。
友人の言う通り、確かに運動はしていないから。
「サークルとか部活とか、運動すればいんじゃね? ……前も言ったな、これ」
「俺にね。やってないけど」
眼鏡の友人がおにぎりをかじりながらうなずく。
前に腰が痛いと言っていたが、どうやら今は平気なようだ。あの時何か動画を紹介していた。あれのおかげだろうか。
「サークルはもうやってる。家庭菜園だから運動じゃないけど」
「雑草とったりとか? それで腰を痛めたんじゃないの?」
「……否めないけど、運動不足との複合な気がする」
昔から草取りは日課としてやっていた。都会とはいいがたい田舎にある実家では、それなりに広い庭で野菜を作っており、とれたてのおいしい野菜を目当てにせっせと世話をしていたものだ。
その時には腰痛にはならなかった。違いがあるとすれば、自分の環境だろう。高校までは、授業に体育があった。この大学には、必修で体育というものはなく、自分はとっていない。他にも高校時代は通学に自転車を使っていて、毎日運動していたようなものだ。今は一人暮らしで、大学へは徒歩圏内。そう言った意味でも運動量は減っている。
「ラジオ体操を始めるべきかな……」
「朝、ジョギングするだけでも違うと思うけどな。あ、俺は走ってるぞ。朝晩」
スポーツマン、といった雰囲気をもつ友人が、にっこり笑った。その視線は自分だけでなく、眼鏡の友人にも向けられている。ここにいる3人は、全員一人暮らしで家も近い。朝晩一緒に走ろうぜ、と言っているんだろう。
「そこまで頑張れない……」
「……じゃあ、そんな運動不足の女の子にこれを見せてあげよう」
もう一人の友人からの視線に対し、あからさまに顔をそらした眼鏡の友人がスマホを見せてきた。
「スワイショウ?」
「太極拳の準備体操らしいよ。脱力して、腕を振る運動。血行が良くなったり、姿勢がよくなったりするんだと。前に見せたイス軸のもとになってるんだとか」
動画を簡単にみたところ、骨盤、背骨、肋骨をつかったスワイショウというものをわかりやすく実践している動画のようだ。コツも添えてあり、これならできるかもしれない。
「見た感じ、簡単だね」
「テレビ見ながら毎日習慣としてやるようにすれば、効果あるかもね」
ラジオ体操も続けられる気が、実はしない。そんな自分でもこれならば続けられるかもしれない。
実際にやってみると難しいのかもしれないが、やっていることは単純だ。とにかく継続できることが重要という考えもあるから、そういった意味でもこれは良いものかもしれない。数をこなせばきっと上手になると思う。
「ありがとう。試しにやってみる」
「そんなことよりも走ろうぜー。な、二人とも!」
『それはやだ』
眼鏡の友人と、見事に声がはもった。


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