一人暮らしを始め、それなりに自炊もこなすようになった。米を自分で炊いて食べるようになると、自然と一緒に作る料理がある。それは、味噌汁。茶碗に入れたご飯の隣で、そっと柔らかな湯気を放つその存在は、自炊を始めてとりあえずなんとなくで作ってみたものだ。
そう。お湯に味噌をとかしてそれは作られたのだった。
「なんか違う」
ひと口飲んで、すぐにそう思った。味が薄い気がする。味噌の味はするが、するだけだ。そんなにおいしくない。
味噌汁というよりも味噌湯みたいな感じだ。
「味噌汁なんてレシピ見なくても作れるだろ、という考えが間違ってたか……」
今更ながらレシピを見て、自分の味噌汁に何が足りていなかったのかには気づいている。
そう、出汁だ。
思えば実家で食べた母の料理は普通の和食だったが、それはうまかった。なぜうまいのか。そこにあるうまみはいったい何だったのか。その答えがこれだろう。
出汁を使ったレシピについて簡単に調べると、味噌汁、出汁捲き卵、鍋物、煮物、いろいろなところに出汁が使われている。出汁自体にも種類がいろいろとあるようだ。和食でよく使われるのは、鰹節、昆布、いりこ、干ししいたけの4つだが、それ以外にも色々とある。
出汁というのはそもそも、煮出し汁の略でうまみ成分を水に溶かしたものを言うようで、野菜の皮を煮て野菜出汁にしてカレーに使ったり、鯛のあらを煮て、お吸い物を作ったりもできる。これらもすべて出汁だ。
とにかくうまみが溶けていれば出汁だし、うまみが溶けているのだから何に使っても大体おいしくなるのだろう。それでも出汁によって味は変わるし、そこに好みというものも出てくる。
思えば実家で飲んでいた味噌汁も日によって味が違っていた。同じ味噌を使っていてもだ。あれは日によって出汁を変えていたのだろう。
「そうだ。いりこ出汁だ。あれで作った味噌汁が俺は好きだったんだな」
スマホで出汁の種類を見ていて、気づいた。あの味の味噌汁をここで作ろうと思えば、まずはいりこを買ってこなければならないのか。
いりこ出汁の取り方を見る。頭をもぎって、半分に割って、内臓を取り出して、お湯で煮る……。
「めんどくさ。……ああ、だからほんだしってのがあるのか」
出汁を使ったレシピを見る中で、いくつも出てくるほんだしという記載。
どうやらそれは風味調味料といわれるもののようだ。原料の粉に化学調味料を合わせたもののようだが、水にさっと溶けて、お値段もお手頃。お味もそれなりで、とにかく使い勝手がいいようだ。
他にも顆粒だしや粉末だしというものもあるらしい。顆粒だしは出汁の素となるものを加工しているもののようだが、天然だしと比べると風味がたりずかつ塩分が入っているらしいので、使用する際は味付けに注意が必要。粉末出汁は天然出汁を粉末状にして使い勝手を良くしたもののようだ。
どうもネットで検索する限り、風味調味料も顆粒だしも粉末出汁も、総じて顆粒だしとして扱われていそうだ。それだけ顆粒だしという言葉が身近なのかもしれない。
「とりあえず、今度顆粒だし買ってこよう。あといりこから直接出汁をとるのも、も一度は試してみるかなあ。面倒だけど」
とりあえず自分の失敗と、これからどうするべきかがわかり、スマホをしまう。
明日話すネタができたと思おう。元から料理をかなりやる弁当持参の女の子と、ついに自分で弁当を作ってくるようになった眼鏡の友人だ。きっとおおいに笑ってくれるだろう。
「それにしても……」
ため息をつくと、目の前の味噌汁もどきを見る。
どうするかな、これ。


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